適応回路の基本設計の構築メカニズム

研究代表者

堀江 健生

教授 大阪大学 大学院生命機能研究科

研究分担者

佐藤 ゆたか

准教授 京都大学 大学院理学研究科

研究分担者

尾崎 遼

准教授 筑波大学 医学医療系

脊索動物の中で最も単純な神経系を持つホヤの幼生をモデルとして、適応回路の基本設計(回路発生・回路構築・回路機能)を明らかにします。

 脳神経系には多様な神経細胞が存在しています。個々の神経細胞はそれぞれ特徴的な性質を備えており、脳の高次神経機能を担っています。そのため、各神経細胞の性質がどのような分子機構で決定されるのか、分化した神経細胞がどのように神経回路を構築するのか、神経回路において個々の神経細胞がどのような機能をしているのかを解明することは神経科学にとって根源的な研究課題です。しかしながら、哺乳類では脳を構成する細胞数の多さから、その全貌を解明することは困難であると考えられます。本計画研究では、この問題を解決するために尾索動物ホヤをモデルとして、ゲノム生物学、情報生物学、発生生物学、神経生理学など様々な手法を組み合わせて研究を行います。
 ホヤの幼生は脊索動物の中で最も単純な神経系を有しており、その中枢神経系はわずか177個の神経細胞から構成されています。そして、ホヤ幼生は177個の神経細胞から構築される神経回路を駆使して、重力、光、機械刺激などの環境刺激を受容し、それぞれの環境刺激に適した行動を示します。本研究計画では、ホヤの幼生をモデルとして、シングルセルトランスクリプトーム(scRNA-seq)解析を駆使し、適応回路を担う神経細胞種をセンサスすることにより、適応回路の基本設計(回路発生・回路構築・回路機能)を解明することを目指します。遺伝子発現パターンに基づく神経細胞の分類や神経細胞の分化機構の解析に加え、ホヤ幼生はコネクトームが明らかにされた二番目の動物であることを生かし、分化した神経細胞が神経回路を構築していく機構や神経回路の機能解析を行います。さらに、各計画研究班と連携し、scRNA-seq解析の高等動物の神経回路解析への応用やC01郷班との連携によりシングルセルオミクス解析の新たな技術開発への協力を行います。

【研究紹介図】

主要な関連論文

  1. Horie T et al. (2018) Regulatory cocktail for dopaminergic neurons in a proto-vertebrate identified by whole embryo single cell transcriptomics. Gene Dev 32: 1297-1302.
  2. Horie R et al. (2018) Shared evolutionary origin of vertebrate neural crest and cranial placodes. Nature 560: 228-232.
  3. Horie T et al. (2011) Ependymal cells of chordate larvae are stem-like cells that form the adult nervous system. Nature 469: 525-528.