研究公募班A01:八木班 菅生紀之特任准教授(大阪大学大学院生命機能研究科)らの論文が、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of tne United States of America(PNAS)」(オンライン)に掲載されました。
Sugo N, Uchimura A, Matsumoto R, Nakayama H, Fujimoto S, Mizuno S, Higuchi M, Toshishige M, Satoh Y, Wakayama S, Wakayama T, Yagi T.
DNA polymerase β suppresses somatic indels at CpG dinucleotides in developing cortical neurons.
Proc Natl Acad Sci USA 122(33), e2506846122 (2025)
10.1073/pnas.2506846122
私たちの脳は、発生過程において遺伝子の設計図に従って形成されますが、この過程でゲノムDNAに予期せぬ傷が生じ、それが修復されないまま残ると、神経細胞に不可逆的な突然変異が蓄積することが知られていました。しかし、その仕組みは不明でした。今回、Polβを欠損させたマウスの神経細胞の発生過程の全ゲノム配列解析を詳細に行ったところ、遺伝子を活性化するDNA脱メチル化に際して、神経関連遺伝子の発現調節を担うエンハンサー領域にあるCpG配列近傍に、インデル変異(塩基の欠失や挿入)が集中的に生じることを明らかになりました。本研究成果は、突然変異を原因とする脳発達障害や神経疾患の起源としての理解につながるだけでなく、DNA修復機構やエピゲノム制御を標的とした、新たな治療・予防法の基盤となる成果として期待されます。
掲載リンク
https://www.fbs.osaka-u.ac.jp/ja/research_results/papers/detail/1104