計画研究班C01:郷班 郷 康広らの論文がProceedings of the National Academy of Sciences誌に掲載されました。

北海道大学・和多和宏先生との共同研究成果を発表しました。

自然科学研究機構生命創成探究センター: https://www.excells.orion.ac.jp/news/9515
自然科学研究機構生理研: https://www.nips.ac.jp/release/2024/01/post_528.html

Toji N, Sawai A, Wang H, Ji Y, Sugioka R, Go Y, Wada K (2024)
A predisposed motor bias shapes individuality in vocal learning.
Proc Natl Acad Sci USA 121(3): e2308837121. doi: 10.1073/pnas.2308837121

[概要]
北海道大学大学院理学研究院の和多和宏教授らの研究グループは、自然科学研究機構生命創成探究センター及び生理学研究所の郷 康広教授との共同研究として、歌鳥(鳴禽類スズメ目)で近縁種ではあるが異なった歌パターンをもつキンカチョウとカノコスズメを親として、その異種間交雑したハイブリッドのヒナの発声学習の個体差に着目した研究を行い、生得的な発声運動特性が個体ごとに異なり、それに基づいた発声学習バイアスを持つこと、脳内の興奮性投射神経細胞の遺伝子発現特性が、発声学習バイアスの個体差と機能相関を持つことを明らかにしました。

囀(さえず)り歌を学習によって獲得する歌鳥は、個体発達過程で、同種他個体の歌を学習モデルとして、自発的な発声練習を繰り返し、個体ごとにユニークな歌を学習獲得します。本研究では、親種2種からそれぞれのゲノム遺伝情報を受け継ぎ、遺伝的多様性を人為的に大きくしたハイブリッド個体はどのような歌を学習するのか、その歌発声学習の個体差はいつ現れるのか、そして、その学習の個体差は脳内でどのように表象されているのだろうかといった研究の問いをもって始めました。

これらの問いに応えるべく歌学習環境を統制し、ハイブリッド個体の発声学習の発達過程の詳細を解析したところ、発声学習における個体差は発声運動学習の練習初期から出現し、それが発声学習発達過程を通じて学習バイアスとして、歌発声パターン獲得に影響することが明らかになりました。

さらに、脳内で発声学習に関わる神経回路内のどの脳部位で遺伝子発現に個体差が存在するのか、1細胞(シングルセル)遺伝子発現解析を実施したところ、発声運動野から舌下神経核へのグルタミン酸興奮性投射神経細胞に特異的に発声学習個体差を表象する遺伝子発現特性を持つことが分かりました。

生得的に生成しやすい運動特性が動物個体ごとに異なり、これをもとに自分に合った学習モデルを獲得しやすくしていることが今回の一連の研究で明らかになりました。

なお、本研究成果は、2024年1月10日(水)公開のProceedings of the National Academy of Sciences誌(PNAS, 米国科学アカデミー紀要)に掲載されました。