計画研究班B01 佐々木拓哉らの論文がCell Reportsに掲載されました。
S. Yagi, H. Igata, Y. Ikegaya, T. Sasaki
Awake hippocampal synchronous events are incorporated into offline neuronal reactivation.
Cell Reports (2023), 42: 112871. doi.org/10.1016/j.celrep.2023.112871
神経回路に記憶を固定するための新しいメカニズムを解明
動物が新しい出来事を経験したとき、脳の海馬では、時折、神経細胞が同時に活性化する現象(「覚醒時の同期活動」または覚醒シャープウェーブリップル)が知られていますが、その意義は完全には解明されていません。本研究では、ラットの海馬に電極を埋め込んで、複数の神経細胞の活動を同時に記録し、こうした「覚醒時の同期活動」のパターンが、経験が終わった後の休憩中や睡眠中にも繰り返し観察されることを見出しました。この神経活動の意義を考えるためには、記憶の性質を考える必要があります。脳に記憶を長期的に保存するには、単に記憶の形成という過程だけでは十分ではなく、その後の休憩中や睡眠中において、記憶の固定化という過程が必要です。本研究で見出した海馬の「覚醒時の同期活動」は、こうした記憶の固定化にも影響を及ぼすことを示しました。従来、海馬の記憶研究では、記憶の形成と固定というプロセスは独立の時期に独立の神経メカニズムとして起こると考えられてきましたが、本研究は、この定説の再考を促す新しい概念となります。