生体脳内1細胞での適応回路再編成のトランスクリプトーム・シナプトーム解析 /Transcriptome/synaptome analysis of single-cell adaptive circuit remodeling in the brain in vivo

三國 貴康 /Takayasu Mikuni

新潟大学 脳研究所 教授
Niigata University, Brain Research Institute, Professor

ヒトや動物が学習しその記憶が持続するためには、脳内の神経回路が構造的にリモデリングされることが重要である(Holtmaat and Svoboda, Nat Rev Neurosci 2009)。このような神経回路のリモデリングには、学習直後に脳内でタンパク質が新規に生合成されることが必須であることが知られている(Klann and Dever, Nat Rev Neurosci 2004)。しかしながら、学習直後にどのタンパク質が神経活動依存的に生合成されるのか、生合成されたタンパク質がいつ、どこで働いて神経回路がリモデリングされているのかは、ほとんどわかっていない。そこで本研究ではまず、神経活動依存的なトランスクリプトームの同定技術を開発し、申請者が確立しつつあるCRISPR-Cas9とケミカルタグを用いた新規生合成タンパク質イメージング技術および本領域の前期公募研究で取り組んだシナプトームイメージング技術と融合し、「トランスクリプトーム・シナプトーム解析技術基盤」を創出する。そのうえで、このトランスクリプトーム・シナプトーム解析技術基盤を用いて、マウスにおいて運動学習直後に神経活動依存的に生合成されるタンパク質を網羅的に同定し、どの新規生合成タンパク質がいつ、どこで働いて神経回路がリモデリングされているのかを明らかにする。本研究により、適応回路センサス領域の様々な研究に資する技術基盤が確立し、本領域が対象とする様々な適応回路メカニズムの解明に役立つことが期待される。

文献

  • Mikuni T†, Uchigashima M. (2021) Methodological approaches to understand the molecular mechanism for structural plasticity of dendritic spines. Eur J Neurosci 54(8):6902-6911.
  • Nishiyama J*, Mikuni T*†, Yasuda R†. (2017) Virus-mediated genome editing via homology-directed repair in mitotic and postmitotic cells in mammalian brain. Neuron 96(4):755-68.
  • Mikuni T et al. (2016) High-throughput, high-resolution mapping of protein localization in mammalian brain by in vivo genome editing. Cell 165(7):1803-17.
  • Mikuni T et al. (2013) Arc/Arg3.1 is a postsynaptic mediator of activity-dependent synapse elimination in the developing cerebellum. Neuron. 2013; 78(6):1024-35.