人工シナプスコネクターによる神経再編成と障害回復モデルからの新規適応回路センサス /Novel Adaptive Circuit Derived from Neural Reorganization and Impairment Recovery Models via Synthetic Synapse Connectors
武内 恒成 /Kosei Takeuchi
愛知医科大学 医学部 教授
Aichi Medical University, School of Medicine, Professor
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研究室HP:https://researchmap.jp/shu1n2zei
リサーチマップ:https://researchmap.jp/shu1n2zei
脊髄損傷や外傷性脳損傷には根本治療法がない。そのため基礎研究から応用に向けてはiPS細胞移植等も数多く試行されています。そこには、どのようや回路やどこのニューロン間のシナプスが繋がればよいのか、などの重要な課題も残されています。私たちは、脊髄損傷時に神経軸索の再生を阻害する因子 (線維性瘢痕阻害)形成に人為的に介入する技術(Nature communication 2014)や、さらには神経回路の構築再編への全く新しい直接介入法として、神経(興奮性)シナプスを狙った場所とタイミングで人為的に結合する“人工シナプスコネクターCPTX”の合成に成功し応用を展開しています(Science 2020)。この技術を駆使して神経疾患および脊髄損傷マウスの劇的な行動機能回復を示し、現在は臨床応用も視野に入れた解析を進めています。比較的シンプルな脊髄回路において、損傷後の生理機能回復のための適応回路の構築・遷移と、どの回路がどの順序で形成されることが生理機能回復に重要かを明らかにしてゆきます。さらには、新規開発を進めている“次世代シナプスコネクター”での脊髄回路における人為的な適応神経回路構築の可能性とその技術開発も目的としています。具体的には、1)合成人工シナプスコネクターが脊損の初期あるいは慢性期でどの回路を繋ぐことが重要か、回路遷移とその重要性を網羅的snRNA-Seq解析とウイルスベクターなどを駆使した回路センサスの探索から明らかにしてゆきます。2)他のさまざまなシナプス構造を接続可能な次世代シナプスコネクターの構築を国際共同研究にて進めています。これを脊損モデルに投与し、回復に適応する新たな回路の遷移形成を試みます。3)AI機械学習によって、脊損後の生理機能回復過程の厳密な定量化に成功しています。神経回路の遷移がどのような表現型に現れるか、最も効果的な回路はどれか、個別にセンサスした回路と表現型との相関を明らかにしてゆきます。
脳よりはシンプルとはいえ未解決な課題も多い脊髄の神経回路とその回路編成の解明に、さらには今後の治療応用への糸口としても、これらは貢献が期待できると考えます。
文献
- Suzuki K. et.al. (2020) A synthetic synaptic organizer protein restores glutamatergic neuronal circuits. Science. 369(6507):eabb4853.
- Saijo Y et.al. (2024) Human-induced pluripotent stem cell-derived neural stem/progenitor cell ex vivo gene therapy with synaptic organizer CPTX for spinal cord injury. Stem Cell Reports. 19(3):383-398.
- Takeuchi K. et.al. (2014) Chondroitin sulphate N-acetylgalactosaminyl-transferase-1 inhibits recovery from neural injury. Nat Commun. 2013;4:2740.