光学・機械学習と網羅的分⼦情報解析の融合による恐怖記憶特異的ハブ因⼦の同定
揚妻正和
量子科学技術開発研究機構 量子生命・医学部門 量子生命科学研究所 量子再生医工学研究チーム主任研究員/生理学研究所・生体恒常性発達研究部門 准教授(兼任)
HPリンク
https://researchmap.jp/masakazu_agetsuma
https://www.nips.ac.jp/hsdev/agetsuma/index.htm
情動異常を伴う精神疾患に対し、これまでの研究で関連する脳領域や遺伝子が示されたものの、多くの疾患で決定的治療法の確立に至っていない。それは、1)脳神経細胞が集団で行う高次元演算が正常な脳機能実現に重要、2)その演算を実行する脳回路は過疎的で、個体内外の様々な因子により更新され続ける、3)脳情報処理には遺伝子多型や分子の発現様式の違いも影響する、など情動制御の背景にある多様で複雑な要因が互いに影響していることが一因である。つまり、これらが連動して作用する情動システムを理解する上で、従来型のそれぞれ個別に捉える研究では不十分であると考えられる。
そこで本課題では、揚妻らがこれまで研究を進めてきた恐怖記憶を支える脳基盤に焦点を当て、独自に開発してきた光学・機械学習の融合による「神経細胞集団としての情報処理動態」の解析技術(図参照)を基軸に、網羅的分子プロファイル解析を通した責任因子の同定、多領野連関解析、光遺伝学による因果性の証明を融合したマルチスケール探索を実現することで、恐怖情動記憶の背景にあるハブ因子の同定を推進する。
また、領域内での連携を通じて、揚妻らの技術と領域内における各専門家らの技術の融合を進め、上記マルチスケール脳動態データの統合的解釈を可能にするような新たな研究パイプラインの構築と提案を目指す。
文献
- Agetsuma M* et al. (2021) Activity-dependent organization of prefrontal hub-networks for associative learning and signal transformation. bioRxiv. (*: Corresponding author)
- Horiuchi H.†, Agetsuma M.† et al. (2021) A novel CMOS-based bio-image sensor to spatially resolve neural activity dependent proton dynamics in the awake brain. Nat Commun, (2020) 11, Article number 712 (†: equal contribution)
- Agetsuma M.* et al. (2018) Parvalbumin-Positive Interneurons Regulate Neuronal Ensembles in Visual Cortex. Cerebral Cortex 28, 1831-1845 (*: Corresponding author)
- Agetsuma M et al. (2010) The habenula is crucial for experience-dependent modification of fear responses in zebrafish. Nature Neuroscience 13, 1354–1356