逆行性バーコーディングによる局所神経回路構造の解明

濱口 航介

京都大学大学院医学系研究科 生体情報科学講座 准教授

神経細胞は大きく分けて興奮性・抑制性という2タイプ、その下に多様なサブタイプを持ち、それぞれが独自の神経回路接続を持つと考えられます。RNA-seqや 蛍光 in-situ hybridization (FISH) は細胞の持つ遺伝子発現パターンを調べる事ができる強力な手法ですが、神経細胞同士の結合情報を欠いています。本研究では、2光子カルシウムイメージングを用いた神経細胞の情報同定、狂犬病ウィルスを用いた入力ネットワーク同定、さらにRNA-seq や FISHによる細胞タイプ同定を行うことで、情報と回路、分子発現を結びつけます。具体的には、意思決定課題を行うマウスの大脳皮質高次運動野を対象に、将来の行動・運動を表現する短期記憶を担う局所回路構造の解明を目指します。さらにバーコードを付与した遺伝子欠損型狂犬病ウィルスを用いることで、大規模に情報・回路・分子発現を同定できる手法の開発を行います。

文献

  • Hamaguchi K, Tanaka M, Mooney R, “A Distributed Recurrent Network Contributes to Temporally Precise Vocalizations'', Neuron, 91 (3), 680-93, 2016.
  • Hamaguchi K, Tschida KA, Yoon I, Donald BR, Mooney R, “Auditory synapses to song premotor neurons are gated off during vocalization in zebra finches'', eLife, 3, e01833, 2014.
  • Hamaguchi K, Mooney R, “Recurrent Interactions between the Input and Output of a Song­bird Cortico-Basal Ganglia Pathway Are Implicated in Vocal Sequence Variability”, J. Neuro­science, 2012, 32(34): 11671-11687.