計画研究班A01:堀江班 佐藤ゆたか(京都大学理学研究科)の論文が英国の国際学術誌「Nature Ecology & Evolution」にオンライン掲載されました。

Tasuku Ishida and Yutaka Satou.
Ascidian embryonic cells with properties of neural-crest cells and neuromesodermal progenitors of vertebrates.
Nature Ecology & Evolution doi: 10.1038/s41559-024-02387-8

私たちヒトを含む脊椎動物は,脳や目・鼻などの感覚器官が集中した「頭部(あたま)」と肛門より後方に位置する「尾部(しっぽ)」をもちます。この頭部と尾部はともに,脊椎動物の進化の過程で獲得されましたが,これは,それぞれ「神経堤細胞」と「神経中胚葉前駆細胞」と呼ばれる細胞集団の出現と深く関係していると考えられています。神経堤細胞と神経中胚葉前駆細胞がどのように出現し,どのような過程を経て進化してきたのかを知ることは,脊椎動物の起源と進化を理解するうえで重要です。
京都大学大学院理学研究科 石田祐博士課程学生と佐藤ゆたか同准教授は,脊椎動物にもっとも近縁な無脊椎動物であるホヤの胚が,脊椎動物の神経堤細胞と神経中胚葉前駆細胞の両方の性質をそなえた細胞をもつことを見出しました。本研究成果は,頭部をつくり出す神経堤細胞と尾部をつくり出す神経中胚葉前駆細胞が進化的にはもともと一つの細胞集団であり,脊椎動物の系統において神経堤細胞と神経中胚葉前駆細胞へと分化した可能性を示しています。
本研究成果は,2024 年 4 月 2 日(現地時刻)に英国の国際学術誌「Nature Ecology & Evolution」にオンライン掲載されました。

本研究の概要 神経堤細胞と神経中胚葉前駆細胞は胚発生中に生じる「脊椎動物らしさ」を作り出すために重要な細胞群である。本研究成果は,これら細胞群が脊椎動物の誕生以前にすでに一つの細胞群として存在していた可能性が高いことを示す。