FISHを用いた異なる機能のニューロンの新規分取法の開発による包括的エピゲノム解析 /Comprehensive epigenomic analysis by a novel method for isolating specific types of neurons using FISH
岸 雄介 /Yusuke Kishi
東京大学 定量生命科学研究所 准教授
The University of Tokyo, Institute for Quantitative Biosciences, Associate Professor
HPリンク
研究室HP:https://www.kishilab.iqb.u-tokyo.ac.jp
リサーチマップ:https://researchmap.jp/yu_kisi
脳内には無数の細胞が存在する。例えば大脳皮質だけでも、マウスで400万、ヒトで200億ものニューロンが存在し、分類の仕方によって十種類から数十種類ものサブタイプに分けられる。これらのニューロンはサブタイプごとに、あるいは分化段階ごとに、そして関連する回路ごとに異なる機能を担っている。究極的には1つ1つのニューロンが脳内でどういう役割を果たすか、そしてその基盤メカニズムを知ることが神経科学の1つの目標である。
多細胞生物の体内で同一のゲノムが細胞種ごとに異なる機能を制御できる1つの理由は、DNAやヒストンに施される化学修飾などによって遺伝子の転写を制御するエピゲノムである。そのため、異なる種類(サブタイプ・分化段階・回路)のニューロンの機能の一部はエピゲノムによって制御されている可能性がある。しかしながら、機能や種類が異なるニューロンごとのエピゲノム状態の比較は、誰でも簡便にできるわけではなく報告も限られている。またc-FosやEgr3などの最初期遺伝子の発現をリアルタイムで捉えて、活動状態に応じて単離することは現在では技術的に難しい。
本研究では、ニューロンごとに異なる機能の基盤として、エピゲノムがどのような役割を果たしているか?という学術的「問い」に、誰でも簡便に野生型のニューロンから機能や種類が異なるニューロン核を単離できる技術を確立することで答えることを目指す。
文献
- Frey T et al. (2023) Age-associated reduction of nuclear shape dynamics in excitatory neurons of the visual cortex. Aging Cell. 2023 Sep;22(9):e13925
- Kishi Y and Gotoh Y. (2021) Isolation of genetically manipulated neural progenitors and immature neurons from embryonic mouse neocortex by FACS. STAR Protocol. 2021 May 17;2(2):100540
- Eto H et al. (2020) The Polycomb group protein Ring1 regulates dorsoventral patterning of the mouse telencephalon. Nat Commun. 2020 Nov 11;11(1):5709